東京で「セブに拠点を置く企業のPRサポート」をする会社を立ち上げた理由

「セブ島には、まだまだ知られていない魅力や可能性がたくさんある。実際に何度も現地に滞在したことで、それを確信しました」。
そう語るのは、今年2月に株式会社story’s baseを設立した、同社代表取締役の小松田久美さん。国内の企業をはじめ、日本で唯一、セブ島に拠点を置く日系企業のPR・広報代行事業をメインに日々まい進しています。フリーランスのライターとして活躍していた小松田さんが、なぜセブに魅せられ起業に至ったのでしょうか?

滞在して見えたのは、「セブは可能性だらけ」だということ。

――まずは、story’s baseの事業内容について教えていただけますか?

小松田:当社は、日本の企業のPR・広報活動を代行する会社です。「専任の広報担当者を置くことができない」など広報活動に課題を抱える企業に対し、ブランドの社外広報をはじめ、SEO対策、広報物作成、SNSでの発信など、プロの立場からさまざまな支援を行っています。
最大の特徴は、日本で唯一、「セブ島に拠点を置く日系企業」を対象としていることです。こうした企業では、広報関連に日本人社員の手が回らないケースも多いため、事業に専念していただけるよう、広報以外にも秘書的な業務もかねてお手伝いをしています。また社名については、「企業やブランドがもつ、大切なストーリーが集まる場所」「伝えたい物語は、すべての始まり(ベース)になる」という、ふたつの意味をもたせてstory’s baseと名づけました。

――「セブ島」というと観光地のイメージが強いのですが、事業をするうえでセブ島を選ばれたのはなぜですか?

小松田:個人的な話になるのですが、ここ3年程、語学留学のために半年に一度のペースでセブ島に滞在する機会がありました。その間、さまざまな場所を訪れる中で現地の方と知り合う機会も増え、やがてPRに関するご相談をいただくように。すると、観光だけではわからなかった内情や国民性が見えてきたのです。

例えば、英語が第二言語であるセブでは、その英語の発音を高く評価されています。その証拠に、英語のコールセンターが世界一多い。語学だけでなく、ほかにもさまざまな分野で高い能力を持つ人がたくさんいることを、私も滞在して初めて知りました。

一方で、貧富の差も肌で感じました。どんなに高いスキルを持っていても、たくさんの可能性があっても「発展途上国」というだけで目を向けてもらえないのです。でも、そんな現状を変えたいと奮闘する日本企業がある。私もその思いは同じです。ならばPR・広報の立場から支援しようと思ったのです。

「今」ではなく、「数年後」の価値を見据えたPRを。

――小松田さんが考えるPR・広報活動とは、どのようなことですか?

小松田:「会社が伝えてほしいことを、ユーザーに正しく、かつメリットになる形で伝えるにはどうしたらいいか」を提案すること。これが、私が提供できるPRの形だと思っています。その際に大事にしたいのは、クライアントさまの理念や思いです。「その会社のサービスを手にした人々は、どう豊かになるのか」を一緒に、真剣に考えたい。そのため、会社のプロデュースやブランディングから関わることもあります。

PRの役割って、例えばプレスリリースのような情報を発信することだけではないと思うんです。むしろ重要なのは、発信によってファンをつくることではないか、と。そう考えると、ありとあらゆることがPRに繋がるわけです。会社独自のコンテンツを作ったり、商品の開発秘話を紹介したり、というように。

大切なのは、クライアントさまが目指すゴールを共有すること。そのためにも、今だけの効果を狙うのではなく、「数年後でも価値が残る発信をすること」を心がけています。

起業は“恩返し”。ライターが安心して経験を積める場に。

――そもそもライターとして活動されていた小松田さんが、PR・広報の仕事にシフトしていったきっかけは何だったのですか?

小松田:ライターとして5年程活動していたのですが、近年になり経営者や起業家の方への取材が増えていったんです。それに伴いPRに関わる仕事もいただくようになったのですが、それがとても面白くて。次第に、短期間ではなく、もっと腰を据えてPRの仕事に携わりたいと思うようになりました。

――なるほど。フリーランスとしてでもPR・広報の仕事に携わることもできたと思うのですが、なぜ起業されたのでしょうか?

セブ島の仕事を受けるようになり、法人化したほうが、海外に拠点がある会社と信頼関係が築きやすいというメリットを感じるようになったからです。

また、フリーランスとして活動した自身の経験も大きいですね。というのも、仕事が増えるにつれて、駆け出しのライターさんに仕事の依頼をする機会が多くなったのですが、同時に「ライターが安心して業務に専念できる環境が必要では」という思いが強くなったのです。

もちろん、フリーランスという立場でも仕事を依頼することはできます。でも法人化することで、文章に対する責任をライター個人ではなく会社で一緒に負うことができる。会社が守ることで、ライターさんが安心して仕事に専念し、経験を積めるのではないかと考えたのです。私自身、これまで多くの会社や編集者の方にチャンスをいただいてきました。だから、これは恩返し。今度は、私が次世代のライターさんにきっかけを提供できればうれしいです。

――最後に、今後の目標を教えてください。

小松田:まずは、PR・広報の代理店として、クライアントさまが満足する結果を出すことです。その積み重ねですね。大きな目標としては、セブに関わる仕事を広げること。PR・広報の分野ではもちろん、いずれは別の形でも、セブの人々のキャリアづくりに貢献していきたいと思います。

また当社で一緒に働いてもらうメンバーが、一年後を目途に、別の媒体から指名で仕事を依頼されるような、即戦力のライターとして活躍してくれたらうれしいです。そのためにも、たくさんの挑戦や失敗をここで経験してほしい。一人前になったら独立してもらい、今度はパートナーとしてより深くお付き合いしていけたらいいですね。

ライター :川井渚 (nagisa /story’s base)